空き家の相談をしていると、意外と出てくるのが 「敷地の一部(または全部)が農地だった」パターンです。
この場合、売却や活用(駐車場化・資材置場・太陽光・宅地化など)を進める前に、農地転用(のうちてんよう)の壁に当たります。
門司区でも、市街地から少し外れた場所や、昔の名残で地目が農地のままの土地は普通にあります。
この記事では、空き家と農地転用が絡むときに「何が問題で、何から確認するか」を、なるべくやさしく整理します。
農地転用って何?
ざっくり言うと、農地(田・畑など)を、農地以外の用途に変えることです。
例:住宅、駐車場、資材置場、太陽光設備、店舗用地など。
ここで大事なのが、建物が空き家かどうかよりも、土地の地目・区分が農地かどうかです。
空き家を活用したいのに、足元の土地が農地扱いだと、手続きが必要になります。
(1)立地基準
農地をその農業における優良性や周辺の立地の状況から区分し、それに従って転用の許否を判断する基準です。
転用を農業上の利用に支障が少ない農地へ誘導する基準であることから、農業上の重要性が高い農地ほど転用が厳しく制限され、低い農地ほど容易に転用が許可されます。
農地の区分は以下の5つです。
①農用地区域内農地(農地法4条6項1号イ、5条2項1号イ)
市町村が定める農業振興地域整備計画において農用地区域とされた区域内の農地は、農用地区域内農地に区分されます。この区分の農地については、原則として転用は許可されません(例外として農用地利用計画において指定された用途等のために転用する場合)。
②甲種農地(農地法4条6項1号ロ、5条2項1号ロ)
市街化調整区域内の土地改良事業等の対象となった農地(8年以内)等、特に良好な営農条件を備えている農地は、甲種農地に区分されます。この区分の農地についても、原則として転用は許可されません。ただし、一定の場合には例外が認められます(土地収用法の認定を受け、告示を行った事業等のために転用する場合)。したがって、この区分にあたる農地は原則として転用できません。
③第1種農地(農地法4条6項1号ロ、5条2項1号ロのうち②甲種農地を除く)
10ヘクタール以上の規模の一団の農地、土地改良事業等の対象となった農地等良好な営農条件を備えている農地は、第1種農地に区分されます。この区分の農地についても原則として転用は許可されませんが、土地収用法対象事業等のために転用する場合には例外が認められます。
④第2種土地(農地法4条6項1号ロ(二)、5条2項1号ロ(二)、4条6項2号、5条2項2号)
鉄道の駅が500m以内にある等、市街地化が見込まれる農地又は生産性の低い小集団の農地は、第2種土地に区分されます。この区分については農地以外の土地や第3種農地では建築物が立地困難な場合であれば許可されます。
⑤第3種農地(農地法4条6項1号ロ(二)、5条2項1号ロ(二))
鉄道の駅が300m以内にある等、市街地の区域又は市街地化の傾向が著しい区域にある農地です。この区分の農地は原則として転用が許可されます。
(2)一般基準
立地にかかわらず申請書などに基づいて判断します。
この基準は3つあり、①申請に係る農地を当該申請の用途に供することが確実であること(農地法4条6項3号、5条2項3号)、②周辺の農地に係る営農条件に支障を生ずるおそれがないこと(農地法4条6項4号、5条2項4号)、③一時的な利用のための転用において、その利用後にその土地が耕作の目的に供されることが確実であること(農地法4条6項5号、5条2項5・6号)があげられます。
また、これらのほかに特別の要件を加える都道府県等もあります。
転用にかかわる課題
転用にかかわる大きな課題の一つは基準の複雑さです。特に立地基準については5つもの区分があり、それぞれの区分の違いも分かりにくい部分が多くあります。
また、特に転用許可が難しい場所にある農地については、農地以外の形で活用することが難しく、権利者が農地を管理できなくなると土地の有効活用が出来なくなってしまう、という事態も発生しています。
まず確認するのは「地目」と「都市計画」
農地転用の要否は、まずこの2つで方向が見えます。
1)登記簿(全部事項証明書)で地目を見る
- 地目が「田」「畑」なら、基本的に農地転用の論点が出ます
- 地目が「宅地」なら、農地転用ではなく別の論点(建物・境界・再建築など)が中心
2)市街化区域かどうか
市街化区域内の農地は、ケースによっては「許可」ではなく「届出」で進むことがあります。
逆に、市街化調整区域などはハードルが上がりやすいので、最初にここを把握するのが重要です。
農地法4条と5条の違い(ここだけ押さえたらOK)
農地転用でよく出てくるのがこの2つです。
- 農地法4条:自分の農地を、自分が転用する(権利移動なし)
例:自分名義の畑を駐車場にする - 農地法5条:売買や賃貸など「権利移動」を伴って転用する
例:畑を買って家を建てる/畑を借りて資材置場にする
空き家が絡むと「売却」や「貸す」が出やすいので、実務では 5条 が論点になることが多いです(状況次第)。
空き家×農地転用で“止まりやすい”3つの落とし穴
① 売買契約を急いでしまう
農地転用が必要なのに、先に話を進めすぎると、後で段取りが詰まります。
特に「買主が住宅ローンを使う」場合、スケジュールがシビアになりがちです。
② “農地の一部だけ”が混ざっているのを見落とす
敷地全部が農地じゃなくても、一部が田・畑だと手続きが必要になることがあります。
空き家の庭先・通路・駐車スペース予定地だけ農地、みたいなケースは要注意です。
③ 開発・建築の論点と並走する
農地転用とは別に、開発許可や建築の制限が絡むことがあります。
北九州市の手続きでも、事前協議に触れられているので、ここは並走前提で段取りを組むのが安全です。
何から手を付ければいい?(最短ルート)
迷ったら、順番はこれでOKです。
- 登記簿で地目確認(田・畑かどうか)
- 都市計画(市街化区域など)を確認
- 4条か5条かを判定(権利移動の有無)
- 北九州市の農地手続き窓口(農業委員会)に相談
- 売却・活用の計画と合わせて、必要書類・スケジュールを組む
「売るかどうか」「貸すかどうか」より先に、農地転用が必要な土地かを掴むだけで、判断が一気にラクになります。
まとめ:空き家の出口を決める前に、土地の“地目”を見よう
空き家問題って、家の話に見えて、実は土地のルールで止まることがよくあります。
農地が絡む場合は、思いつきで動くより、確認→段取り→計画の順で進めた方が、ムダな遠回りが減ります。
農地転用と一言で言っても、そもそもの”農地”の定義であったり、関係法、手続きや許可基準などなど、分かりづらい事がたくさんありますので気になる点があればご連絡ください。
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「セカンドオピニオン(第二の意見)」としてご利用ください。
・農林水産省:農地転用許可制度について
https://www.maff.go.jp/j/nousin/noukei/totiriyo/nouchi_tenyo.html
・北九州市:農地の手続き(申請書・届出書など)
https://www.city.kitakyushu.lg.jp/nougyou/20000024.html
・e-Gov法令検索:農地法(第4条・第5条など)
https://laws.e-gov.go.jp/law/327AC0000000229

